4月12日に公開されたAFPの記事が、ずっと心に残っていた。
ジェーン・グドール博士が指摘するのは、
われわれが自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果、パンデミックが発生した。これは何年も前から予想されてきたことだ。
例えば、われわれが森を破壊すると、森にいるさまざまな種の動物が近接して生きていかざるを得なくなり、その結果、病気が動物から動物へと伝染する。そして、病気をうつされた動物が人間と密接に接触するようになり、人間に伝染する可能性が高まる。
ということ。
そういえば、イタリアの小説家・パオロ・ジョルダーノの『コロナ時代の僕ら』(何を守り、何を捨て、僕らはどう生きていくべきか。『コロナの時代の僕ら』全文公開【終了/著者あとがきのみ継続】|Hayakawa Books & Magazines(β))にも、同じようなことが書かれていた。
環境に対する人間の攻撃的な態度のせいで、今度のような新しい病原体と接触する可能性は高まる一方となっている。病原体にしてみれば、ほんの少し前まで本来の生息地でのんびりやっていただけなのだが。
森林破壊は、元々人間なんていなかった環境に僕らを近づけた。とどまることを知らない都市化も同じだ。
多くの動物がどんどん絶滅していくため、その腸に生息していた最近は別のどこかへの引っ越しを余儀なくされている。
家畜の過密飼育は図らずも培養の適地となり、そこでは文字通りありとあらゆる微生物が増殖している。
3日前、写真家の石川直樹がインスタグラムにこんな投稿をした。
ウイルスに勝つとか負けるとか巷にはトンチンカンなフレーズが溢れていますが、もともとは人間が森を破壊し、居場所を狭められた動物たちが近接しあった末に人間に伝染したもの。打ち勝つとか、そういう捉え方をすること自体が意味不明です。
この部分に深く共感。日頃、自然と向き合っている人たちの言葉は深い。
文中で紹介されていた『アフリカ旅日記』(星野道夫)が気になって、バリューブックスで購入。昨日届き、さっそく読んだ。
星野道夫が、ブログの冒頭で紹介した世界的に有名な霊長類学者・ジェーン・グドール博士とアフリカを旅した記録。
ジェーンは決して人間の都合を自然に押し付けるようなことをしない。人間は自然の一部として、自然の常識を受け入れ、理解し、対話する。
星野は本の中でこんなことを書いていた。
人はどのように生き延びてゆくのか。物質文明の豊かさと余裕の中で生まれてくる私たちの心の問いかけも、日々の暮らしに逆に問われ続ける人々の前では、なぜか色褪せてくる。
例え人類が新型コロナウイルスに「打ち勝った」としても、パオロが『コロナ時代の僕ら』で書いていたように、
今からもう、よく考えておくべきだ。いったい何に元どおりになってほしくないのかを。
ということを考えないことには、前に進まないような気がする。少なくとも私は。
折々のことば:1824 鷲田清一:朝日新聞デジタルwww.asahi.com
(パオロの言葉は朝日新聞「折々のことば」でも紹介されていた)
ジェーンが指摘する「動物たちの軽視」には、私たち人間による「種差別」の問題が含まれていると思い、内容がつらすぎて途中でストップしてしまった『動物の解放』(ピーター・シンガー)を改めて読もうと決意。
まとまっているようでまとまらない文章になってしまいましたが、無職37日目。