ディズニープリンセスたちの「まだ見ぬ世界を見てみたいの」志向を、わたしは「ここではないどこかへ至上主義」と呼んでいる。
『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」で、主人公アラジンはジャスミンを自由な世界へと誘う。
見せてあげよう 輝く世界
プリンセス 自由の花をほら
今や女性が男性に自由を「与えられ」、新しい世界へと「連れて行ってもらう」時代は終わった。
『美女と野獣』の主人公ベルはオープニングテーマ「朝の風景」でこう歌う。
信じられる?結婚を申し込むなんて
わたしがあんな乱暴な人の妻なんて
ミセスガストン?考えられない
ガストン婦人?ご冗談
絶対いやよ 死んでも彼と結婚なんてできない
もっと素敵な世界が私を待ってる
神様だけがご存知だから 素晴らしい世界を
(この、もっと~の絵が美しくて泣ける)
生まれ育った街を離れれば「もっと素敵な世界」が広がっているに違いないという希望に満ちたベル。
そして『ポカホンタス』では、主人公のポカホンタスが親の決めた結婚に迷いながら「川の向こうで」で自分に問いかける。
大地のきらめきリズムに溢れてる
太鼓の音が遠く聞こえる
そう 決まった道を歩いてても
わたし心ときめかないわ
川の流れが うずまく先に
きらめく未来がわたし
待ってるわ 素晴らしい 未来が両手を広げ
ほほえみながら川の向こうで
夢よ教えて わたしの道を
幸せな結婚?退屈な毎日
それとも 待ってる なにか
川の向こうで
ベルもポカホンタスも誰かが敷いたレールを歩む人生や一般的な「幸せ」を疑い、「ここではないどこかへ」と歌う。平坦な道よりも、困難があっても新たな未来を切り開きたいと願う。
ディズニーの世界にどっぷりとハマった幼少期~学生時代。「女性記者第2号」(今思うと酷い肩書き)としての採用、社会人生活と共に始まった圧倒的男社会での新聞記者ライフ。嘘のような本当だけど、新聞記者時代、心が折れそうになったときは「朝の風景」や「川の向こうで」を聞いて自分を鼓舞していた。
だから20代前半まで、結婚は人生の墓場だと思っていた。「ここではないどこかへ」行くために、結婚は足枷になると思い込んでいた。
けれど、言うまでもなくそれは選ぶ相手の問題だ。結婚することでもっと自由でもっと自分の道を歩めることもあるんだと、「ここではないどこかへ」行く力は、結婚することによって二倍にも三倍にもなり得るんだと、もし結婚をためらっている女性がいたら伝えたい。
コロナだし「ここではないどこかへ」行きたくなって書きました。