バイト初日

「ななちゃん」って、私のことを下の名前で呼んでくれる人のことが好きだ。ななって可愛らしい名前だし(自分で言うのもなんですけども)、会社員をしていた頃も比較的下の名前で覚えられることが多かった気がするが、なぜか叱られるときは苗字で呼ばれることが多かった。人類の不思議。今日は新しく始めたバイトの初出勤日だった。全員が初めましてなので当然のように自己紹介をするのだが、このバイト先ではみんな下の名前で呼び合っているようで、「さとこです(仮名)」「あ、ななって言います」「私はゆかりです(仮名)」みたいな感じで挨拶をし合うのがとても新鮮で、そしてなんだか嬉しかった。結婚して姓が変わってからと言うもの、といっても既に8年ほど経つのだが、どうも今の姓が「自分」と一致していない。名前で呼ばれると、きちんと私を認識されているようで嬉しくなる。バイト先は、以前から好きで足を運んでいた飲食店だ。なんとなく老舗っぽいと思っていたが、1911年創業と聞いて驚いた。私はいつも同じメニューしか注文しないのだけど、お客さんの選ぶ料理は様々で、これまでこんなに美味しそうなものを逃していたのかと気づく。なにせ100年以上の歴史があるので、おばあちゃん(がいまの店主?)が発する一言ひと言が大変重たい。客足が途切れた頃、一緒に賄いを食べていたら「私のためじゃなくて、店のためにと思って頑張ってほしい」と言われた。それから「うちで働いていると、いいことあるよ」と。この言葉はまるでおまじないのようで、私はこれから、この店で頑張ってバイトを続けていればなんとなく良い方向へと向かっていくのだということに、漠然とだけど心強くなった。32歳になってアルバイトをすることについていろんなことを言う人もいて、少し前は他人から言われたつまらないことに心が揺れていたのだが、今日出勤してみて、頭じゃなくて身体を動かして働くこととか、メインの仕事(ライター)では関わらない人と会ったり一緒に働くこととか、お客さんに接しながら垣間見る世の中のこととか、こんな経験ができるのって素晴らしいじゃない、少なくとも私はこの仕事「も」頑張りたいとすごく前向きな気持ちになれた。初日だしそのうち行きたくなくなる日あるだろうし続くか分かんないけど!バイト後、そのまま銭湯に直行して入った湯船は大変気持ちよかったです。