ふつうをぶっ壊す

いかに異なる価値観や全く知らないルール、考え方の違うひとと出会って自分の中にあるふつうをぶっ壊していくか。初めて自分のふつうではないものに出会ったとき、もしかしたらあなたは、わたしは、一時的に驚いたり傷ついたりすることもあるかもしれないけれど、自分のなかのふつうをぶっ壊すことは、まわりまわってわたしを強くする。たとえば15歳のとき、人生で初めて訪れた海外で、買い物中にホストマザーが突然「つかれた」と言って履いていたサンダルを買い物かごに投げ入れ店内を裸足で歩きはじめたとき。滞在中のアイスランドでテレビをつけたら登場人物が全員手話で会話をしている、子ども向けの戦隊モノ番組を放送していたとき。崖から車道に落ちてきた小石をひたすら拾う仕事を見たとき。ロードトリップのさなか、道に迷って民家を訪ねるも日本語も英語も通じないひとと出会ったとき。はじめて訪れた通学路にある古本屋さんで手に取った本を読み、日本で数ヶ月間仕事をして数十万稼いではタイに脱出して「日本を逃げる」若者たちの存在を知ったとき。わたしのなかのふつうはどんどんぶっ壊されて、そのたびに心が揺さぶられ、薄い殻を破ってこれまでよりも少しだけ広くなった世界で少しだけのびのびと生きられるようになるのだ。たかが日本国内でしか話題にならないようなタレントや一般教養を知らなかったくらいでふつうじゃないなんてそんなものはどうだってよく、もっと強烈な、もっと自分にとってふつうじゃない経験をして、どんどんじぶんを解放したい。わたしが本を読むのは人に会うのは旅をするのはそういうことなのかもしれないとふと思った。