AとBとCを同時にやろうと思っているうちにBとCのことを忘れてしまって、AのあとはBをやるんだけどCのことはまた抜け落ちてしまう。だんだんイライラしてきてCに取り掛かるころには全部が嫌になっている。そこに第三者がいたらその人のせいにしたり八つ当たりしたりしそうになる。昨日は娘がいつもより早く登園したので(我が家では娘の送りを夫が担当している)私も早くから仕事をするぞと意気込んで県立図書館へ向かったのだけど、カバンの中の荷物を取り出す段階でパソコンのACアダプターを持ってくるのを忘れていることに気付いた。起動したパソコンはバッテリー残量が42%で、その日に完成しなくてはいけない原稿は午前中いっぱいかかる予定で、どう考えてもバッテリーが足りない。忘れ物を取りに家に帰るという選択肢はない。私は「一度来た道を戻る」のが苦手、というよりも堪え難いほど苦痛で、マンションの6階に住んでいるのだが、地上についた時点で忘れ物に気が付いても、どうしても家に戻ることができない。家にいる夫にそれとなく県立図書館までACアダプターを持ってきてもらえないか頼んでみたけど用事があるようで叶わなかった(危うく夫にキレるところだったがぐっとこらえた)。一度作業を始めると中断できないのが私だから(たぶん、原稿を書いている途中でバッテリー切れになったら本当に発狂するか気分が地の底まで沈む)バッテリーがなくなる前に原稿を一本書き上げなければいけないというプレッシャーのなか一所懸命原稿に取り組んだら一時間ちょっとで完成したけどすごく疲れた。せっかく一つの仕事が早く終わったから、休みの日に取り掛かろうと思っていた仕事を少しでも進めておきたくて(いまものすごく立て込んでいる)、結局いちど家に戻ることにした。せっかく家に戻るのだから銭湯の道具を持って、それから気分が落ち込んでいるから薬を飲もうと思っていたのに、家に着いてACアダプターを手にした瞬間満足して、その他のしようと思っていたことを全て忘れてしまったことに気付いたのは再び県立図書館へ向かう車内でのことだった。今朝も似たようなことがあった。印刷したものを離れた部屋へ取りにいくついでに、あの音楽が聴きたくなったからCDを取って、あとは請求書を送らなくてはいけないからホッチキスとセロハンテープを取って、と考えていたのだけど、一つのタスクをするたびに残りのタスクを忘れて、結局部屋とリビングの往復を3回した。はたから見ると、私は同じ場所を何度もぐるぐる歩き回っている人だ。勝手に忘れて勝手に何度も行き来をして勝手にへとへとに疲れている。こんなにマルチタスクが苦手なのに、同時進行で動いている仕事がいくつかあって、それらは何の滞りもなく進んでいる。仕事は自分のなかで優先順位的にかなり上位にあって、というか他者が関わっているから迷惑をかけてはいけない、絶対に失敗できないというプレッシャーがあって、何度もスケジュール帳やメールを確認しているから失敗をすることが少ない(そのぶん過度のプレッシャーから悪夢にうなされることが多く、昨晩は翌日つまり今日の取材が不安で取材先がめちゃくちゃ嫌なやつで大喧嘩をする夢をみた)。ところで坂口恭平の『生きのびるための事務』を読んでいる。本の中で出てくるジムが、「1円も稼いでませんがね。でも幸せなんです。私はやりたいことだけやっていて、それで何一つ困ってないんですから。」「『ただ書くこと』が好きなら、書いていたら楽しくて勝手にどんどん書き進んでいけます。一方、『何かを作ろう』と考え始めると、作業は止まります。」「《才能》っていうのはそれだけです。いつまでも楽しく好きなことを、続けられる=《才能》があるってだけです。それが本になったり、売れてくっていけるようになったりするのは、《才能》ではなく《評価》についての話ですよね。」と話していたのが心に刺さった。私が書くのが好きで、書くことで満足しているならそれで十分なんだよ。深呼吸!