あいだ

ネット(だったと思う)で話題になっていた「ーセックスは普通で、居酒屋のホッケ一夜干しみたい」という表現が気になりすぎて金原ひとみの『アンソーシャルディスタンス』を買った。金原ひとみの本を読むのは久しぶりで、と書いて気づいたのだけど、意外とこれまで一冊も読んだことがなかったような気がする。昨日読んだ「Conscientia」がめちゃくちゃ面白くて備忘録として引用。

 

もし龍太が夫に会って、夫から昨晩セックスをしたと聞いたりしたら、完全なレイプだと思い込んで夫にひどい怪我をさせる可能性もある。もちろん無理やりではあったけれど、本気で拒んでいれば彼はセックスを完遂できなかったはずだ。ここまでの痣ができているのだから、私が激しく拒んでいたのは間違いないけれど、レイプされたという意識はなかった。そしてこれは、意識の低い女がいるから自分たちの立場まで危うくなる、とフェミニストから批判されるべきニュアンスの意識のなさではない。(略)もちろん、本当のギブアップサインを分からない人、勘違いした人によって性被害を受けてしまう人がいるのも事実だが、乗り気でないセックスを十把一絡げにレイプとすることは、セックスそのものの持つ意味を矮小化させてしまうし、そんな意味なくていいと切り捨ててしまうことは、人間の意味を矮小化させてしまうことにも繋がる。でもそんなことを龍太に言っても無意味で、目に見える世界だけを信じている彼にとって、セックス+痣=レイプに違いなく、それは1+1=2であるのと同じくらい当たり前かつ正しい公式なのだ。