インターネットに人生の大半を費やしてきた。高校生のころ電子掲示板にハマって、そこでvanishというハンドルネームの少し年上の女の子と仲良くなり、共通のお気に入りバンドであるBUMP OF CHICKENのライブを観に行くことになった。全国ツアーだったから私たちは各地のチケットを手分けして申し込み、vanishが見事仙台公演のチケットをゲットして、仙台で初めて会うことになった。新幹線に乗って東京に行ったことは何度もあったけれど、大宮で乗り換えて東北まで足を伸ばすのは初めてだった。仙台駅前で待ち合わせて、牛タンを食べて商店街を歩いて、夕方ライブに行って、公演後、vanishの彼氏が車で迎えに来てくれてそのままvanishが彼氏と暮らす福島まで移動して家に泊めてもらい、翌日は福島市内で遊んで高速バスで新潟に帰った。vanishと過ごした二日間のこと、特に一番の目的であったバンプのライブの内容はほとんど覚えていなくて、記憶に残っていることといえば、二日目の昼、vanishが朝ごはんの代わりにじゃがりこを食べていたことだった。私の実家は、というか私の母はスナック菓子があまり好きではなくて、家ではほとんどお菓子を食べなかったし私自身好んで食べなかった。朝ごはんには、昼ごはんには、夕ご飯には決まって食事らしい食事を取るものだと思っていたし、夕飯後にお菓子を食べることもしなかった。だから、朝ごはんも食べずにコンビニで買ってきたばかりのじゃがりこを開封してポリポリ食べ始めたvanishに当時ものすごく衝撃を受けた。ごはんの代わりにお菓子を食べてもいいんだって。もう一つ、大学に進学して何年目だったか、大好きなsigur rosのライブ映像を映画館で上映するイベントが渋谷であって、漏れなくチケットをゲットして会場に向かったのだけど、そのときもちょっとしたカルチャーショックというかびっくりした。新潟市の公立高校に通っていた頃、sigur rosを好きな人なんて周りにいなかった。私がmixiのsigur rosコミュニティに入っているのを見つけた同級生の親しくない男の子が「同じ高校にsigur rosを聴くひとがいるなんてびっくりしました。マイミクになりましょう」とメッセージを送ってきたほどだった。それが、世の中にsigur rosのファンなんてほとんどいないと思っていたのに、渋谷の映画館は満席だったのだ。私が見ている世界は、日々関わっている人は、ほんの一部でしかないことを知った。世界が変わる体験とまではいかないけど、海外行かなくても本読まなくても映画見なくてもインターネットで出会った誰かの言葉とか、目の前にいる人のちょっとした振る舞いで視野が開けることもあるし世界がぐんと広がることもあるよなと思ったり。