GO NORTH

現在帰省しています(=家を留守にしています)みたいなことをSNS上に投稿するのは防犯上あまり良くないというのは何かで読んだことがあるけれど、つっても私の家に金目のものなど何一つないし、ということで年末年始を過ごすため、昨日から実家に帰省しています。関東に住む人からしたら北陸地方から北陸地方への移動なのだろうけど、私たち家族にとってみれば「GO NORTH」という感覚がある。実際、天気も気温も違うしね。道中はスリップによる単独事故が多発していて、いつもは4時間強で到着するところ今回は6時間もかかった。今日は街に出かけた。たい焼き屋さんを見かけたので、昼食をろくにとらなかったむすめに「あんこ食べたい?」と声を掛けると「うん」とのこと。お店の人に「一つください」と注文すると「今すぐ食べますか?」と聞かれ、(これから駐車場に戻って車で食べさせるから、今すぐと言えば今すぐだけど、この場で食べるわけではないから今すぐではないと言えば今すぐではないよなと)迷ってしまい、「(私の答えによって)何が変わるんですか?」と質問したら「今すぐに食べるようだったら温めますし、すぐに食べないのであれば温めないで代わりに家庭での温め方を記した用紙を付けます」と丁寧に教えてくれた。つまり「今すぐ食べますか?」はコンビニでよく聞かれる「温めますか?」だったのだ。たまに相手の質問の意図がわからなかったり、イエスかノーで答えなくてはいけないと思い込んでフリーズしてしまうことがある。ばあちゃんは現役時代、工場勤務で騒音のある環境に長年晒されていたことから耳が遠くなり、加齢も相まってかなり耳が悪い。数年前から補聴器を付けているのだが、どうやら年々進行する難聴に対して補聴器が合わなくなったらしく、最近新しいものに買い換えたそうだ。しかしばあちゃん曰く、新しく手に入れた補聴器は「聞こえすぎる」とのこと。難聴のためこれまで聞こえなかったトイレを流す音や換気扇の音などが気になって、頭がおかしくなりそうだと訴えていた。補聴器を付けたことがないのでばあちゃんの主張を完全に理解することはできないけれど、私には感覚過敏があるので気持ちはわかるような気がする。これまでぼんやりとしてしか見えていなかったり聞こえず気付かなかったものが、はっきりと見えるようになったり、時に癇に障るほどうるさく感じられたりする。世界は情報が多すぎるのだ。夜、むすめがちょっと心配になるレベルで体調を崩したので、急遽休日や深夜でも診察をしている急患診療センターへ連れて行った。平時の急患診療センターがどのようなものかはわからないが、内科は受付から診察までに2時間半待ちという状況。センター内は具合の悪そうな人たちで混み合っていた。小児科を受診するまでどれくらいだっただろうか、待合室でじっと自分たちの名前が呼ばれるのを待つあいだ、いろんな会話が聞こえてきた。緊急性がない(と思われる)のに救急車を呼んで来院し、看護師さんに半ば呆れた様子で怒られるひと。インフルエンザで高熱を出し、救急車で運ばれてきたひと。母親に抱かれ「おしりが痛い」と言いながら泣き続ける子ども、階段から落ちて急いで連れて来られた子ども。日本語がわからず問診票を記入できないひと。痛そうな様子でおなかをおさえている人や、おそらく切れてしまったのだろう、指をティッシュでぐるぐる巻きにしてギュッとおさえているひともいた。年末の急患診療センターはとても忙しそうだった。見るからに調子の悪そうな人たちのなかにいて、自分まで具合が悪くなりそうになったが、私は体調を崩した子を連れてきた保護者の立場である。自分が具合悪くなっている場合ではない、と気持ちを立て直し、診察を終えて無事家に帰ってきた。子どもが生まれてから今回のように「自分がくよくよしている場合じゃない」と奮い立つことが多くなった。遠くの戦争も足元の国内情勢も、それを受けてくよくよしている暇はない。子どもという存在のおかげで、私は少しずつ強くなっている。小児科で対応してくれた先生はとても丁寧で優しい人だった。あの場にいたひと全員が、この世の全てのひとが、穏やかな年末を過ごせますように。

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↑北極に見える(?)けど富山市