金沢の街並みは美しくて、外の世界は楽しくて、年金制度はダメダメだった。

失業して、早いもので10日が経つ。

 

会社員時代は(天引きなので)ほとんど意識することがなかったけれど、わたしたちは健康保険料や年金を毎月支払って(納めて)いる。そして、失業者は特例措置として、それらの支払いについて金額が軽減されたり、免除されたりすることがある。

 

解雇直後、会社やハローワークから失業にまつわる各種手続きの案内をもらっていたのだけど、実はほとんど目を通していなかった。この間、何度か読もうとしたのだけど、どの言葉も頭に入ってこなかった。失業の事実と向き合えなかったのだと思う。

 

 

今週になってようやく気持ちに整理がついてきて、書類にも目を通せるようになった。

その中に、一つだけどうしても理解できない文章があった。

 

 

 

国民年金保険料】

保険料は毎月納めていただきますが、収入の減少や失業等により保険料を納めることが難しくなることもあります。(中略)経済的な理由により、保険料を納めることができない場合は、保険料を「全額免除」または「一部免除」する制度があります。

*免除が承認された場合の保険料を納めていない期間は、未納扱いとなりますのでご注意下さい。

 

意味が分からない。注意書きがわけわからなさすぎる。

「*免除が承認された場合の保険料を納めていない期間は、未納扱いとなりますのでご注意下さい」とあるけど、ここで言う、「免除」っていったい何なんだろう。 

(行政のこういう態度をわたしは「分かりづらく書いてごまかそう戦法」と名付けたいと思う)

 

 

ということで、真相を確かめるべく金沢市役所へ。天気が良いので自転車に乗って橋場町~金沢地方裁判所兼六園下経由で広坂に向かった。桜の季節が終わり、次第に緑が濃くなってきた。そういえば香林坊で働いていた新聞記者時代は、毎朝この景色に感動していた(当時はチャリ通)。美しい金沢の街並み。

 

 

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先に断っておきたいのだけど、わたしは行政にいちいち文句を言いたいわけでは絶対ない。何かを指摘するのはストレスだし、疲れるし、心が消耗する。できれば円滑に物事を進めたい。綺麗な景色を眺めてリフレッシュして家に帰ることができるのであれば、それに越したことはない。でも、わたしの性格上、疑問をそのままにしておけないのだ。職業病なのかもしれないけど。

 

 

さて、金沢市の「市民課国民年金係」で聞いたのは以下の通り。

 

わたし「この案内を読むと、実際のところ免除を認められたとして、免除額を払わないままにしておけば将来の年金受給額が減るし、そうしたくなければ免除された年金保険料を追納しなくてはいけないということですね?」

 

担当者「その通りです」

 

わたし「(免除って書くなよ)」

 

担当者「さらにですね」

 

わたし「?」

 

担当者「井上さんは配偶者がいらっしゃるかと思いますが、配偶者がいらっしゃる場合は、免除を受けるための条件となる❝所得❞は、❝世帯としての所得❞を参考にします」

 

わたし「???」

 

わたし「我が家では家計を完全に別々にしているのですが」

 

担当者「そうであっても、配偶者がいる場合は、世帯所得が基準となります。それがたとえ別居中だろうと、離婚調停中だろうと同様です」

 

担当者「ご主人は働いているんですよね?ご主人がいるなら、ご主人に払ってもらったらよいですよね(にこ)」

 

わたし「(昔ながらの価値観が拭い去れないお局公務員っぽい発言に絶句)」

 

※悲しいかな、フィクションではありません。

 

 

 

免除については「前年所得が一定額以下」の場合に、その所得に応じて1/4免除~全額免除・納付猶予が決まる。例えばパンフレットにある「免除を受けるための所得の目安」に当てはめて考えると、わたしの前年所得が200万円、夫が200万円だった場合、世帯所得が「400万円」となるため、免除の対象とならない(二人世帯の1/4免除のラインは376万円)。

 

これが、仮にわたしが単身だとしたら前年所得が296万円以下の場合は1/4免除を受けられるのだ。

 

 

「苦しいときは配偶者に養ってもらおう」と言わんばかりの制度。担当者は「家計が別々でも、別居中でも、離婚調停中でも配偶者がいれば世帯収入」と言ったけど、仮に別居中や離婚調停中だったとして、誰が配偶者に「失業してちょっと支払いが苦しいから代わりに年金払って」とお願いできるのか。。。

 

 

結局、後でまた払わなきゃいけないなら「免除」してもらったって意味ないじゃん、と思って申請はしてこなかった。

 

 

何度も言うけど、わたしは役所と衝突したいわけではないし、国を恨んでいるわけではない。ただ、今回の件然り、理不尽だったり使い勝手が悪かったりする制度が多すぎる。わたしは妻である前にわたしだ。わたしの夫は、わたしの夫である前に一人の人間だ。わたしの夫にわたしを養う義務はない。というか、仮にどちらかが病気になって働けなくなったりでもしたらそりゃどちらかが家計を担うことになるかもしれないけれど、少なくとも国からそれを当然の責務のように押し付けられたくない。いきなり「世帯収入」とか持ち込まれたくない。

 

 

※年金の件があり不安になって、念のため国民健康保険料の担当窓口で確認したところ、健康保険料は軽減されたとしても、後から差額を支払わなくても良いとのこと。

 

 

 

 

悶々としながら役場を後にしたものの、外は青空が広がっていて、すがすがしい陽気。

 

気分転換がてら、せせらぎ通りのgelateria RITORTAに寄って茶色のジェラート(BACIとBLACK TEA)を食べたらめちゃくちゃ良い気分になった。相変わらずリトルタのジェラートはおいしい。久しぶりに会った今川さんは相変わらずがんばってて、相変わらず良いお店を作ってた。お店には、店主の世界観や哲学、こだわりが詰まっているから好きだ。食べたいものは、やっぱりお店で食べるのが一番だなと思う(※きょうはお店の外で食べた)。今川さんが「無職がたのしいのは、これまで一生懸命働いてきたからですよ」って言ってくれたのがすごく嬉しかった。

 

 

さらに荒木さんに会いたくなってBruckeに寄ったけど、今さら自分が超すっぴんのまま家を出てきたことを思い出して、恥ずかしくて遠くから挨拶してそそくさと帰った。荒木さんの笑顔が見れて嬉しかった。

 

 

 

ステイホームも良いけれど、外の世界も楽しい。

とにかく、街なかに会いたい人がいるって嬉しいことだ。

 

 

 

 

《おまけ》

家に帰ってから、そもそも免除ってなんだっけ・・・と思って、わざわざ新聞記者駆け出しの頃に買った岩波国語辞典を開いて調べた。

めんじょ【免除】義務を果たさなくてもよいと許すこと。「授業料ー」

(岩波 国語辞典 第七版新版)

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(ほら~)

 

 

 

 

終わり。無職10日目。