土曜日

赤ちゃんにスマホのカメラを向けるとどうしても笑っちゃうし、一眼レフを構えるとカメラが気になっちゃってなかなか自然な表情が撮れない。そういえば「自然な表情」を残しておきたいと思うようになったのは最近になってからで、生まれてからしばらくは、すぐに泣いちゃう赤ちゃんをどうにか笑顔にしたい、笑った顔を写真に収めて遠くに住む家族に見せてあげたいと思っていた。そんな私の気持ちに応えるように、赤ちゃんはカメラを向けると笑うようになってくれた。泣き顔も写真に撮っておけばよかったとか、新生児期の泣き声をもう一度でいいから聞きたいなんて思えるほど余裕ができたのも最近のことだ。

 

4年前、福井で開催された川島小鳥の個展「境界線で遊ぶ」に行き、トークイベントで話を聞いた。代表作「未来ちゃん」について川島さんが「当時、未来ちゃんは全くカメラを意識していなくて、だからこそあれほど表情豊かな写真がたくさん撮れた」と言っていた(と思う)。自分が撮った赤ちゃんの写真を見ながら、そんなことを思い出した。(トークイベントのメモ、とっておけばよかった)

 

nov14b.hatenablog.com

 

いろんなところで繰り返し言っているし書いているけど、写真家・濱谷浩の視点が好きだ。彼は著名な作家や芸能人の写真も撮っているけれど、大切なのは「人(庶民)の営み」だと強調する。国も、文化も、歴史も、人が作っている。方向を決めるのは政治家や組織の代表かもしれなけれど、それを動かすのは人だ。最近、これまで以上に人の営みを美しく感じる。命が美しい、何にあっても命が最優先される世の中であってほしいと思う。いま仕事で携わらせてもらっている伝統工芸・九谷焼の連載インタビュー記事では歴史や産業など一見難しいテーマを扱っているのだけど、私としてはその歴史や産業を構成する「人」の存在が少しでも伝わればと思って書いている。

 

kutanism.com

 

最近、これを観て泣いてばかりいる。2020年春に撮影された、多摩川沿いの人々の営み。この1年半ほど、生活の大切さ、命の美しさのようなものを見失っていた気がする。私は自分の生活を愛したい。

 

youtu.be

 

おまけ、今朝の赤ちゃん。

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