多嚢胞性卵巣症候群と無排卵月経(一月二十七日、追記)

もともとの生理不順がさらに酷くなったのは2015年頃、残業ばかり&ストレス過多の雑誌社に勤め始めてからだった。70日間生理が来ないことはざらにあり、生理がきたと思ってもたったの3日間で終わったり、次の生理が1ケ月を待たず、2週間後にきたりもした。生理周期が全く予測不可能なのが大変で、軽い気持ちで近所のレディースクリニックを受診したところ、「多嚢胞性卵巣症候群と無排卵月経」と診断された。医師からは「子どもを作る予定はあるか」と聞かれ、「治療をしない限り自然な妊娠は無理なので、子どもが欲しくなったら相談に来てください」と言われた。当時の私はキャリア思考の仕事人間なうえ夫との二人生活を心の底から楽しんでいたので、子どもは一生欲しくないと思っていた。「子どもは一生欲しくない」。家族にも職場の人たちにも、そう断言していた。子育ては自分に無理だと思っていたし、子どものいる人生を想像できなかった。子どもは自分の可能性を狭めるものだと思っていた。診察を受けた理由は生理不順を治したかっただけなので目的通りピルを処方してもらったのだけど、私の管理不届きで昼寝をしている間にダイニングテーブルに置いておいたピルが風に吹かれて床に落ち、愛犬が大量に誤飲して嘔吐→急いで動物病院に連れて行ったところ「今日をなんとか乗り越えられれば大丈夫」と言われ、不安な夜を過ごしたのはまた別の話・・・。犬は死にかけた(オスだから大丈夫だったらしい)し処方されたばかりのピルはなくなるし、ひとまず再度レディースクリニックを受診してピルを貰おうともらったところピルを無くした理由を聞かれ、カルテに「ピル 犬が食べた」と書かれて以来、恥ずかしくてその診療所には行けなくなってしまった。ということで、2020年春に妊娠するまでの5年間、不妊治療だけでなく生理不順も放置していたので、昨年5月末に実家へ帰省した際、だるさと吐き気が数日間治らなかったときにはいつもの胃腸炎だと思った。近くのクリニックでストレス性の胃腸炎持ちだということを伝え、薬を処方してもらって飲み続けるも治らない。身体が熱っぽくなってきたときには、まさか新型コロナウイルスかと思ってより不安な思いをした。コロナであってほしくないという思いで、その可能性を断ち切るために、当初全く思いもしなかった「妊娠」という言葉が頭に浮かぶ。母にドラッグストアまで運転してもらい妊娠検査薬を買って、家に戻って即検査をしたところ、はっきりと「陽性」のサインが出てびっくりした。直後、母に報告。動揺のあまり「少し考えさえて」と言ってしまった。何を?って感じだけど。その日の晩、夫とテレビ電話をして「とりあえず、生むしかないよね」となった。自分が自然に妊娠したことには、びっくりした。治療をしていなかったのに。生理、来ていなかったのに。欲しいとも思っていなかったのに。コロナの影響(表向きの理由だけど)で会社が倒産して、失業手当に頼りながら、緊急事態宣言下ということもあり基本ステイホーム&仕事ストレスから離れた生活をしていたから不妊症が治ったとしか思えない。根拠はないけど。偶然が重なり合って命が生まれるのだなあと、子を見るたびに不思議な気持ちになる。帰省から戻り、適当に調べた産婦人科(ピルを処方してもらった産院でない)を受診したところ、子宮内に胎嚢を確認+超妊娠初期に服用していた胃腸炎の薬も影響ないと言われて、ホッとして泣いた。あんなに恐れていた妊娠なのに、気づいたら嬉しくて、生まれてくるのがたのしみで仕方なくなっていた。

 

 

追記

このブログを書いた翌日、あさ犬の散歩をしながら「不妊症」と言われたときのことを振り返っていた。自分は子どもが欲しくないと思っていたはずなのに、本来あるべき身体機能に不具合があると告げられた気分で、ショックを受けたのだった。それから、子どもは欲しくないと思っていたものの、心のどこかで「自然にできたら、それもまた人生」と思っていた。それが、治療が必要な不妊症であるために「自然に妊娠する」ということがない。自ら「子どもを作ろう」と望んで「妊娠」を選ばないと子どもを授かれないというのがつらかった。子どもを持つか持たないかという重大なことを、自然のなりゆきではなく、選択肢として考えなくてはならないことが私にとっては複雑すぎて、余計に「子どもは欲しくない」という考えにつながっていった。子どもを持つかどうかを選ばなくてはならない環境は、いま振り返ると苦しかったなあ。