昨日、散歩がてら夫と歩いて街に出た。
途中、公衆トイレに立ち寄ったら床が綺麗で、洗面台のハンドソープが補充されていて、めちゃくちゃありがたい気持ちになった。この状況において、外で手を洗いたいときにちゃんと洗うことができるって、すごくありがたいことだと思う。
誰かのおかげで街の衛生が保たれている。直接関わることがなかったとしても、感謝すべき人はたくさんいるなあと思った。
今日も散歩。夫と卯辰山を登って下った。
日に日に山の緑が濃くなっていく。
卯辰山の各駐車場は閉鎖しているけれど、気分転換に卯辰山をドライブしている車がいくつかあった。卯辰山は金沢市民に愛されている。大なり小なりあるけれど、山に親しむ、自然に親しむというのはとても良いことだと思う。
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5月4日は「みどりの日」。
「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」日(国民の祝日について - 内閣府)なので、マイベスト「自然を感じる本・自然について考える本」4冊を選んでみた。
一冊目はわたしが敬愛する写真家のひとり、『裏日本』や『雪国』など数々の作品を生み出した、日本を代表する写真家・濱谷浩の作品。濱谷浩は新潟・桑取谷の人々や文化と出合ったことがきっかけで、生涯をかけて市井の人々の営みや日本の自然を見つめ、写真によって記録し続けた人物だ。
『生誕100年 写真家・濱谷浩』は、これまでの彼の作品を一冊の写真集にまとめたもの。濱谷は「人間はいつか自然を見つめる時があっていい」(写真集『日本列島』)という言葉を遺しているのだけど、この本からは、濱谷が写した人間にとって「厳しい条件」である自然やその条件の下に生きる人々、また濱谷が自然を見つめる姿勢を通じて、自然の偉大さや、自然に囲まれて生きる自分を意識させられる。
彼はよく「風土」という言葉を使った。人間の生き方は風土と共にあり、風土によって作られるという考え方は、自然を考える上でとても重要な気がする。
(ちなみに『裏日本』や『雪国』は古本業界で5万円以上の値がついている。金沢市内の図書館には代表作が一通り揃っているので、興味がある人はぜひ読んでもらいたい。わたしはこれまで何度も借りています。)
二冊目は、2008年に出版された写真集『SOL』(ARIKO)。
作者のARIKOは現在、家業である京都の蕎麦屋(日本で一番古い!)を受け継ぎつつ、写真家・稲岡亜里子として活動をしている。彼女のことを知ったきっかけは雑誌『TRANSIT』の姉妹誌『BIRD』(現在は廃刊)のアイスランド特集。この写真集は、わたしが夫とアイスランド一周の旅を終えて日本に帰ってきてから買った。
彼女はこれまで何度もアイスランドに足を運び、アイスランドの自然や、双子の姉妹・ErnaとHrefnaの撮影をライフワークとしているのだけど、自然の描写がとても繊細で、水や土の息遣いまで聞こえてくるような美しさがある。まるで、目の前に自然が存在するかのような写真。
わたしがアイスランドを訪れたときに感動したのは、自然の荒々しさであり、自然の力強さだった。氷河やオーロラといったダイナミックなものだけでなく、足元の草でさえも存在を主張してくるような生命力が確かにあった。自然には命や心が宿っていると感じた。
この本にはそんなアイスランドの自然を、地球の神秘を、ありのままに伝える素敵な写真が収められている。
三冊目は、去年、長野県白馬村にある『THE NORTH FACE GRAVITY HAKUBA』で出会った一冊。(絶版だから、ネットで探して購入)
「地球や自然について、個人個人がもう一度よく考えること、その大切さを改めて見つめ直してほしい」との思いから生まれた『THE EARTH BOOK』(2008年/ゴールドウィン発行)。タイトルのフォントで見覚えがある人もいるかもしれないが、これはアウトドアブランド「THE NORTH FACE」が13年間発行した情報誌『EARTH』を再編集して一つの本にまとめたものだ。
冒頭の星野道夫と池澤夏樹の対談を読んで、一気に引き込まれた。
一本の木が岸の浸食でユーコン川に流れ出て、ずっと旅をして北極に出る。それで最後に海岸に打ち上げられるんですが、その途中でいろいろ役目を果たしてゆくんです。ベーリング海に出て、ずっと海を渡っている時には、いろいろな渡り鳥の止まり木になる。浜辺に打ち上げられると、今度はキツネのマーキングの場所になる。最後には原野で暮らしている人がその流木を割って、家に持って帰って薪にする。
ー星野道夫
本編では「自然保護を考える」や「生物について考える」、「雪、氷」、「雨」、「大気」といった27のテーマごとに多角的に自然について語られていて、自然がいかに複雑で、多様で、いのちをつなぐ循環を生み出しているのかというのを伝えている。
「自然」とひとくくりにして語ってしまいがちだけど、自然を構成する様々な要素について改めて学び、認識する良いきっかけを与えてくれる本だ。
※ノースフェイスではいま『PLANET』という情報誌(フリーペーパー)を出しているんだけど、それもまたとても良くておすすめ。
最後の一冊は、『月に映すあなたの一日 Native American Moon Counting Book』(北山耕平 訳と編纂)
わたしは2016年にはじめてアメリカのネイティブアメリカン居住区を訪れて以来、ネイティブアメリカンの人生観・自然観にすっかり惹かれてしまった。ネイティブアメリカンの居住区は、時間の流れ方が全く違っていたのだ。時間や人生を捉えるスケールが違う。1秒や1分を意識している自分がちっぽけなように感じられた。
この本は、北山耕平がネイティブアメリカンから教わった価値観や自然観、哲学についてのことわざを、一冊の本にまとめたもの。どの「レッスン」も素晴らしく、何度も読み返して、全てのページに折り目がついているくらい。
たとえば自然についてこんなことわざが紹介されている。
自然が法であり、動物も、魚も、植物も、自然に従う。ひとり罪つくりなのは人間だけ。
自然の声に耳を傾けよ。自然はあなたのために宝をしまっている。
自然の「ルール」を守り、自然の声に耳を傾けながら生きる。それが北山耕平が伝えた、ネイティブアメリカンの自然観だ。
(ここで思い出すのはディズニー映画『ポカホンタス』の「カラーオブザウィンド」だけど、長くなりすぎるから割愛。とにかく、岩も木もみんな生きて、心も名前もあるわ。なのだ)
自然を敬い、自然の声に耳を傾け、自然と共に生きる。
難しそうで、実はシンプルなことのように感じる。
おまけ。
この本のなかでも紹介されているネイティブアメリカンの言い伝えにインスパイアされて、ノルウェーのシンガーソングライター・AURORA(大好き)が作ったのが「The Seed」。昨年の初来日ライブで最も印象に残っているのがこの曲。MVもめちゃくちゃ迫力がある。
長くて、ちょっと真面目な話になりました。
自然について書くのは難しいんだな。
平和な無職、14日目。