日記

私は部族のエルダーたちが「スタンディング・ピープル[訳註:木のこと]のところに行きなさい」とか「ビーバー・ピープルとしばらく一緒に過ごすといい」というアドバイスをするのを聞いたことがある。人間以外の生き物が、私たちにとっての教師となり、知識の担い手となり、導き手となり得るということを彼らは言っているのだ。「バーチ・ピープル(樺の木の人々)」「ベアー・ピープル(熊の人々)」「ロック・ピープル(岩の人々)」がたくさん住んでいる世界を歩いているところを想像してほしい。尊敬し、人間が暮らす世界に含まれる価値がある「人」であると私たちがみなし、「人」と呼ぶ存在。

 

知人から「ふだんどんな本を読むの?」と聞かれても自分はこういう本を読むのだとはっきり答えることができない。特に好きな作家がいるわけでもないし推理小説や恋愛系など決まったジャンルを好んでいるわけでもない。いつかそんな話を夫にしたときに「あなたが読んでいるのはネイチャー系だよ」と言われて、そうかネイチャー系なのかと妙に納得したことがある。私の乱雑に本が積み重ねられただけの本棚には、森や動物、自然、先住民族などに関する本や雑誌、写真集が多く並んでいる。先月から、二、三年前に買った「植物と叡智の守り人」を毎日少しずつ読んでいる。手に入れた当初に気になる章をつまみ読みして以来ずっと積読していたのだが、(最近は新しく興味を持った本を買うだけのお小遣いもないということもあるけれど)この本は全部読みたいと思ったのだ。庭にあるカエデの木から樹液を集め、夜通し煮詰めてメープルシロップを手作りしたエピソードやネイティブアメリカンの思想と密接に関係する固有の言語のことなど、どのストーリーを読んでいても感動して涙が出てくる。冒頭に引用した文章は「植物と叡智の守り人」の一節だ。娘は最近、ベビーカーで保育園に行きたがる。車だとつまらないのだと言う。10分ちょっとの距離を歩いて送り届け、軽くなったベビーカーを押して同じ道を戻ってくる。登園時間を気にして小走りしている行きよりも景色が鮮明に見える。用水路を流れる水の音。椿にサザンカ。川の流れに身を任せてぼーっとしている鴨。たまにサギもいる。冬が長かったので日光が気持ち良く、川岸にはいつも何かが咲いている。そのまま公園に寄り道することもある。いろんな緑、それから茶色、黄色。家のすぐそばに川があって公園があってよかったと実感すると同時に、人間には誰にもこういう時間が必要だと思う。一昨日は犬といつもの山へ散歩に出かけた。遠くから見ると、うっすらとピンクに色づき始めた山。散歩コースにある桜や桃の木に近づいて一つひとつをじっくり見ると、ピンクとも茶色とも言えるような小さなつぼみがそれぞれの枝の先端についている。小指の爪の半分もない大きさのつぼみが集まって山の色を変化させる。春はもうすぐ。

 

 

 

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