わたしはオオカミ 仲間と手をつなぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になる

朝日新聞書評欄で武田砂鉄が2020年「今年の3点」に挙げていた、元女子サッカーアメリカ代表・アビーワンバックの『わたしはオオカミ 仲間と手をつなぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になる』を読んだ。

朝日新聞書評委員の「今年の3点」③ 須藤靖さん、武田砂鉄さん、戸邉秀明さん、長谷川逸子さん、藤原辰史さん|好書好日

 

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名門女子大・バーナード大学でのスピーチから生まれた本。一冊丸ごと引用したいくらい素晴らしい本。女性を鼓舞し、勇気づけ、希望を与えてくれる言葉の数々、今後何度でも読み返すだろうし、これからの時代を生きる娘にプレゼントしたくなる内容だった。この本に出会えたことが心の底から嬉しい。

 

育児をはじめたばかりの私にとって、「SIX ボールを要求する」の項にあった以下の部分が特に印象深かった。

わたしはグレノンと結婚して継母になった。チェイスティッシュとアマは、わたしを「ボーナスママ」と呼ぶ。子どもたちのボーナスママになったことは、人生最高の決断だった。簡単だったか?とんでもない。毎日、親としてくだした決断に疑問をいだく瞬間がある。でも、疑問だらけになるのは継母にかぎった話ではないとグレノンが請けあってくれたー親とはそんなものよ、と。

(中略)

ときおり、この家族を見て考える。覚悟ができるまで、あるいは失敗しないという自信ができるまで母親にはならないと決めていたら、どうなっていただろう?と。きっと、わたしに起きる最良のことを失っていたにちがいない。自分と似ているよその家族を手助けする機会も。

 

「覚悟ができるまで、あるいは失敗しないという自信ができるまで母親にはならないと決めていたら、どうなっていただろう?」

 

昨晩夫と「子どもが生まれるまでは、子を持つとやりたいことが何もできなくなると思っていたけど、間違いなく子どもがいる人生は最高に楽しいよね」という話になった。わたしが子どもを持つことを恐れていた理由、それは、仕事に全力を注げなくなったり、気軽に海外旅行ができなくなったり、自分の時間がなくなって家族を優先にしたり、家庭に縛り付けられると思っていた部分が大きかった。命を預かるということは取り返しのつかないことで、命や健康を守らなくてはならないし、難しくても辛くても、途中でリタイアできない。子を持つ勇気も覚悟も、失敗しない自信もない。それだったらはじめから望まなきゃいい、現状で十分楽しいんだから。そう思ってた。

 

赤子が生まれて、真っ先に自分の常識をぶっ壊された。効率も完璧も二の次で、とにかく乗り切ることで精一杯の毎日。死ぬほど手を焼いて、体力と気力を使い切り、それでも新しいことや発見の連続で、小さな命の力強さに感動する。私の人生において、子育てという経験をすることができて本当に良かったと思う。海外旅行や仕事と育児を天秤にかけていた頃の自分は、いま見ている世界で満足しようとしていただけだった。夫と価値観を共有し、助け合い、労い合えば、スタイルは変わるかもしれないけれど、仕事も続けられるし家庭に縛り付けられることもない。私たち夫婦の間に子どもが誕生したことで、二人で生活していた頃には見えなかった可能性や未来が現れた。何か新しいことを始めるのに、覚悟も自信も必要なかったのかもしれない。

 

「きっと、わたしに起きる最良のことを失っていたにちがいない。」

これからの人生、もっと素晴らしいことが起きると思うと、楽しみで仕方がない。

 

 

こちらもご参考まで。

女性たちよ、群れをなし世界を変えよう! アビー・ワンバックが『わたしはオオカミ』に記した組織論。【VOGUE BOOK CLUB|池田純一】 | Vogue Japan