無痛分娩について

子どもの頃から、お産が怖かった。

 

初めて「出産って恐ろしい!」と思ったのは、中学生の頃だったと思う。

当時通っていたピアノ教室の先生が第一子を出産したときのこと。

「緊急帝王切開でね、急いで麻酔をしたんだけど、麻酔が効く前に手術が始まったの。もう、切腹だよ切腹!」

衝撃だった。平成(当時)になってもなお、切腹まがいの医療行為があるなんて。

「お腹を切っている感覚があった」と振り返る先生。想像しただけで絶望した。

 

もう一つが、同級生の出産体験。自然分娩をした友人だったが、

「あそこが痛すぎて、早く切って~!って感じ。で、ハサミでジョキジョキってバッテンに切ってもらうんだよ」

会陰切開のことだった。「あそこ」をハサミで十字に切る。麻酔なしで。もはや想像を超えていた。出産、怖い。

 

 

 

わたしがこれまで「子どもを持つこと」に対してポジティブになれなかった理由の一つは、間違いなく出産に対する恐怖心だ。

そのほかにも、ちゃんと育てられるのかとか、そもそも子どもが苦手とか、自分のお腹のなかにもう一つの人間がいる状況が恐ろしいとか、妊娠・出産を先延ばしにする理由はいくらでもあったけど、兎にも角にも出産が怖かった。

 

 

妊娠が発覚したとき、出産は絶対に「無痛分娩」一択と思い、知人に相談したり調べたりして、無痛分娩ができる県内の産院を探した。

ネットで「無痛分娩の予定だったのに、陣痛がきたのが祝日で院長が不在だったから、結局麻酔をしないで出産だった」という出産レポートを見て、「無痛分娩」かつ「計画分娩」ができる産院を選んだつもりだった。

 

 

3回目の妊婦健診となる今日。わたしは初診から「無痛分娩希望」と伝えていたのだけど、計画分娩は可能なのか、夜間や祝日でも対応してもらえるのか、院長先生から直接話を聞いていなかったので、改めて同院ではどのような無痛分娩を行っているのか質問をした。

 

 

返ってきたのは意外な言葉だった。

「無痛分娩に関心があるのでしたら、関西で立て続けにあった無痛分娩の事故はご存知ですよね?」

 

 

もちろん知っていたのだけど、過去の事故は「無痛分娩」(麻酔を使うこと)自体に問題があったのではなく、医師に無痛分娩(麻酔)の知識や経験が足りていなかったから起きたものだったと思う(参考:無痛分娩、本当に大丈夫?~後悔しないために知るべきこと~:時事ドットコム)。ちなみにわたしが通っていた産院のホームページには「硬膜外麻酔併用法」と「陰部神経ブロック法」が可能、とある。無痛分娩は事故の可能性があるから危険と思うなら、そもそも記載しなければ良いのでは?というかその発言は、「他院でも事故起きてるし、できれば(自信がないから)やりたくない」と言われているに等しいと思う。ショックだった。

 

 

極め付けに院長「痛みには個人差がある。どの程度痛くなるかもわからないのに、リスクを負ってまで無痛分娩をすることはおすすめしませんよ」。「無痛分娩=自然分娩よりリスクがある」と言い切るのであれば、全体のお産のうち、無痛分娩と自然分娩それぞれの死亡率を見ないことには分からないと思うのだけど、どうしてニュースに取りざたされた事故により、無痛分娩を選ぶこと自体咎められるのだろう。

 

 

下記にも引用するNHKの記事にはこのようにあった。

2010年から2016年までの7年間における271例の妊産婦死亡を振り返ってみましたが、そのうち、5.2パーセントである14例が無痛分べんを行っていました。先ほど述べました分娩全体で約6パーセントが無痛分べんを行っているというデータと比較しても、無痛分べん自体が妊産婦の死亡を増加させているわけではありません。

 

 

各種検査のため朝から何も食べておらず、院長の予想外の発言にショックを受けた私は、診察室から出て、飲んだばかりの水をトイレで吐いた。

 

 

 

 

出産予定日は来年1月末頃とはいえ、そんなに余裕はない。

家に帰って改めて無痛分娩について調べ直し、麻酔科医がいて、無痛分娩に積極的であり、自然な陣痛が来てからも無痛分娩が可能(計画分娩に限らない)な病院を選ぼうと思った。おわり。

 

 

 

 

以下、参考にしたサイト

www.nhk.or.jp

 

もとに戻って、欧米よりも約4倍も分散化しているという、わが国の分べん施設のあり方が、無痛分べんの行い方まで影響しているのです。すなわち、より集約化している欧米では、自然に陣痛が起こって、分べんのために入院した患者さんに無痛分べんを行うことが多く、約7割以上であるのに対して、わが国では比較的小規模で人員も少ない施設で行うため、夜間や土日といった時間外には無痛分べんを行わない施設が多くあります。そして、ウィークデーの日中に済ますために、計画分べんと無痛分べんをセットで行う傾向にあります。計画分べんは、陣痛誘発剤を使って人工的に陣痛を起こすやり方です。欧米とは逆に、7割ぐらいがこの計画分べんとセットで無痛分べんを行っていると推定しています。実は、この計画分べんには、自然分べんよりも出血が多くなるとか、帝王切開の率が増えるというデメリットがあるのです。初産婦さんでは、自然分べんの帝王切開率が6パーセントなのにくらべて、計画分べんでは18パーセントと、3倍に増加したという報告もあります。

 

www.jsoap.com

 

diamond.jp