339日目の赤ちゃん

nov14b.hatenablog.com

 

出産してから育児日記をつけ始めた。途中から仕事が忙しくなりほとんど書かなくなったけど、赤ちゃんが生まれた月は自分でもコントロールができない変なテンションで、狂ったように毎日書いていた。私は書くことが仕事なのだけど、仕事もなく脳を働かせて自分の言葉を文章にする余裕もなく、それでも自分のアイデンティティを保ちたいと思って辿り着いた結果の育児日記だったような気がする。育児と仕事の両立がつらかった。というか、自宅保育と仕事の両立がつらかった。それだけじゃない、自分の時間がないのがつらかった。ごく限られた時間に仕事をするのもつらかった。問題の原因は夫にはないのに、何かあると決まって夫に当たってしまって何度も喧嘩した。このあいだ美容室に行ったときに美容師さんから「今年一年を漢字一文字で表すとしたら?」と聞かれて、「、、、“苦”ですかね」と即答した自分に引いた。でもそれくらい今年は苦しかった。赤ちゃんが生まれて本来は幸せでいっぱいの一年だったはずなのに、浮かんだ文字が「苦」だった。解決方法は保育園に預けることしかなかった。自宅保育と仕事の両立の大変さをしらなかった私たち夫婦は、何となく「三歳までは二人で赤ちゃんの面倒を見よう」と話していたのだけど、これ以上はもう続かない気がした。産後2、3ヶ月から徐々に仕事復帰して、といってもライター業なので依頼があったときに仕事をする感じなのだけど、大きな仕事を一つ任せてもらい一番忙しかったのが今年の夏。デルタ株が流行っていたこともあり一時保育も使えず、本当に大変だった。大変だったことしか覚えていない。産後すぐに仕事を再開した理由は、私が家にずっと居たら苦しくなってしまう性格だからだったはずなんだけど、いざ来春から赤ちゃんを保育園に預けるとなると「どうせ一歳から預けるんだったら、せめてこの一年間だけでも仕事を休んでたっぷり遊んであげられなかったのか」とどっと後悔の波が押し寄せてきた。働いたのはお金だけのためじゃない、自分を保つためだったのだけど、そこまでしてどうして仕事をしたのかと問われたら、上手に言葉にできない。涙が溢れてくる。私が仕事で外出しているあいだは夫が子守りをしていた。赤ちゃんにとって親は私だけではない。私が不在でも、赤ちゃんは夫とかけがえのない時間を過ごしたと思う。それで十分じゃないのか、なんで育児は自分を責めてしまうんだろう。言葉にするのが自分の仕事であるはずなのに、本当に肝心な自分の気持ちはいつも上手に言葉にできない気がする。本当に思っていることはそう上手く言葉にできないし、言葉にした時点で思いとは少し離れたものになっているのかも知れない。