プロが減っている

「夫は、長くプロのカメラマンとして仕事をしていたけれど、近年仕事が減っていたこともあって、数年前にカメラマンをやめたんです」。そんな話を聞いた。カメラの性能が向上し、根元的にカメラを理解して、高度な技術を持っていなくてもそれなりの写真が撮れるようになった。仮にイマイチな写真でも、写真さえ押さえていれば(シャッターさえ押すことができれば)後からいくらでも補正できる。撮影技術ではなく雰囲気やセンスが重視されるようになった。そんな話、いくらでも聞く。例えば、雑誌の広告出稿は減っている。製作費自体を抑えなくてはならないなかで、一流カメラマンではなくてもそこそこの写真を比較的安価で撮ってくれる人であれば、そちらに仕事の依頼をする。ライターも然り、商業誌などでの経験がなくても、現場にいってそれなりに話を聞き、クオリティが低くても最低限の文章を書くことができれば、編集の力なりなんなりでどうとでもなる。雑誌もwebも、一語一句丁寧に拾い上げるように読む消費者は滅多にいない。誰でもプロになれる時代になったのではなくて、プロを必要としない時代になっているのではないか。もちろん全てではないけど、全体の傾向として。冒頭で触れた夫がカメラマンを辞めたという人は「なんでもそこそこでいいってなってるから、しょうもないものが増えていると思いませんか。中途半端な写真、微妙な文章。プロの技術に触れる機会が減っているような感じがするんです」と話していた。いろいろ考えさせられる話。