「サイドミラーを閉じてしまうとふたたび開くことができなくなるので、開けたままにしておいてほしい」

福森 はい。誰しも圧力がかかれば防衛の反応が起き、それでも防げなかったら攻撃します。それで言えば、自閉症スペクトラムの人は圧力の感じ方が独特です。

たとえばデパートの試食コーナーで、蓋の開いている惣菜があると全部閉めて回ります。「蓋を開けっ放してはいけない」と習っているからそうしてしまう。

でも、そういうことをしたら怒られますよね。どうすればいいかわからなくなることが恐怖なのです。戸惑っているとさらに圧力がかかるから攻撃的になる。それは粗暴行為と言われます。圧力の感じ方が特殊ゆえに僕らに理解しにくい。でも、なぜそうするのかがわかれば対処できます。

自分は健常者だと思っている私たち全員が抱える「ある重い障害」(光岡 英稔,福森 伸) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 

冷静に考えると笑えるんだけど、つい先日、夫がマンションの立体駐車場に車を停めるときに片方のサイドミラーを柱にぶつけて破損してしまった。すぐにいつもお世話になっているカーディーラーに修理の依頼をすると、部品の取り寄せに一週間ほどかかるとのことで、その間「サイドミラーを閉じてしまうとふたたび開くことができなくなるので、開けたままにしておいてほしい」と言われた。修理代を見積もってもらうと、4万7千円とのこと。落ち込む夫を「ぶつけるときはぶつけるし仕方ないよ。相手が人じゃなくてよかったじゃん」となぐさめた。ちなみに我が家の立体駐車場、私が乗っているSUVをギリギリ駐車できるくらいの狭いスペースなので、両方のサイドミラーを閉じないと駐車することができない。そこで何が起きたか。左サイドミラー破損の数日後、いつものように娘を保育園にお迎えして家に帰ってきた私は、駐車する際、車のサイドミラーをぶつけることをわかっていながらも、夫から「サイドミラーを閉じてしまうとふたたび開くことができなくなるので、開けたままにしておいてほしい」と言われたことを忠実に守って右サイドミラーを派手にぶつけて壊してしまったのだった。翌日、半泣きでふたたびカーディーラーを訪れると、当然だけど右サイドミラーの修理にも4万7千円がかかるとのこと。さすがにショックで、わたしは夫に「サイドミラーを閉じてしまうとふたたび開くことができなくなるので、開けたままにしておいてほしい」と言われたからその通りにしただけなのだと言い訳したけど、のべ9万4千円という代償の大きさに言い訳も何もないだろうとしばらく落ち込んだ。そんななか、上に引用した記事の「たとえばデパートの試食コーナーで、蓋の開いている惣菜があると全部閉めて回ります。「蓋を開けっ放してはいけない」と習っているからそうしてしまう。」という文章を読み、私がしてしまったことはまさにこの通りで、やっぱり自分の特性を正しく理解して対処するためにも病院で相談を、と思ったのでした。そもそも夫が左サイドミラーをぶつけなければこんなことにはならなかったんだけどね!やっぱり笑えないか。