日記

北陸に寒波到来。頭のおかしい新卒社会人だった頃、自分の担当先のトップにアポを取り、初めて上司(支局長)に取材同行をお願いしたことがある。福井県の山間にあるその金融機関に朝一番で到着するには早朝6時台の特急電車に乗る必要があり、そのためには5時台に起きて支度をして最寄駅へ向かわなくてはならなかったのだが、支局長からの電話で目覚めたときにはすでに7時をまわっていた。始業は8時半だったにも関わらず7時半には続々と社員が揃いはじめ、7時50分に出社しようものならお局さんから「遅いわね」とイヤミを言われるような職場だったが、一度も寝坊や遅刻をしたことはなかった。あろうことか社会人初の遅刻が、よりによって支局長に同行を依頼した取材で、さらにアポイント先がどんな交通機関を使っても決して帳尻を合わせることができない福井県とは。軽いパニックになった私は、まずは上司に謝るのが最優先のはずなのに「電車が遅延して、私だけ遅く着くことにしておいてください」と上司にメールを入れた。担当先に寝坊したことがバレてはいけないと思ったのだ。そもそも私も上司も同じ金沢を出発するはずなのに、私が乗る電車だけ遅延することなどありえないだろう。言い訳もめちゃくちゃだし、言動もめちゃくちゃだった。頭のおかしい新卒社会人に愛想をつかせた上司はその後、私からの着信を一切拒否。私はどうやって福井にある担当先に到着してどのように謝罪したのかほとんど覚えていないのだが、担当先の専務(うろおぼえ)が私と上司をおいしい醤油カツ丼の店に誘ってくれて、共に昼食をとったことだけ記憶している。時は経ち、頭のおかしい新卒社会人は普通の聞き分けの良い社会人になり、転職し、失業し、今に至る。以前求人サイトの企画でインタビューをしたメーカーの製造ライン責任者が「納期に追われているときはしんどいっすね」と話していたのが印象に残っている。私のようなライターに限らずどの業界でも納期というのはおそらくしんどいもので、納期が増えれば増えるほど重圧が大きくなる。去年を振り返ると夏頃が一番忙しくて、雑誌やらウェブやらいくつかの締め切りを抱えて発狂しそうになっていたのだが、ちょうど心療内科の予約が入っていたので主治医に相談したところ「締め切りなんて絶対じゃないのだから、間に合わせるのが難しければ先方と交渉してずらしてもらうとかできるでしょう」と言われた。その場では納得したものの、締め切りや納期というものは、自分にとって一つひとつが大切な相手との約束という意識が強く、簡単に動かしたり破ったりするのは言うほど簡単ではない。年末年始とゆっくり休んだせいか、年明けもぼんやりしていたら、今月制作している雑誌の特集扉の撮影をすっかり忘れていたことについ先日気づいた。全部で5件取材するうち、既に4件の取材が終わっている。残る1件で扉を撮影するしかない。どうして忘れていたんだろう。でもギリギリ気づいてよかった。世の中ギリギリ気づくようになってるし、ギリギリ間に合うようになってる。失敗しても挽回できるし忘れていたってなんとかなる。そんなことわかっているのだが、無いことに越したことはないし焦ったり慌てたりすることはなるべく無い方が精神衛生上は良い。去年目薬を無くして、いつか出てくるだろうと思って新しいものを買わずにいたら、先日しばらく使っていなかったカバンの中から出てきた。大学生の頃にそこそこ気に入って毎日つけていた腕時計があったのだけど、ある日気づいたら無くなっていた。自分のなかで腕時計をどこかに忘れてくるというのは考えられなくて、そうであれば家のなかのどこかにあるはずなのだけど、見つからないからそれ以来一度も腕時計をつけていない。そろそろ新しい腕時計が欲しい。